教科書との出会い

 東大に合格しました。これまでの受験勉強とは違って、本当の学問というものにやっと触れられる・・・
 高校までの勉強は、基礎。しかも大学入試のためのテクニック重視で、本末転倒。これからが真の勉強だ・・・
 というように、未知なる領域に期待を持っているかもしれません。とてもいいことです。実に多岐にわたる分野の中から好きなものを選び、専門を極めてください。
 「東大の授業って、どんななんだろう?」
 さあ、いよいよ学問の大海原へ出発!東大受験を通して築いた土台をもってすれば、幾重の荒波すらも赤子の戯れです。
 おっと、でもその前に、大事なことを忘れていました。
 教科書です
 教科書はこれから航海に出る諸君にとっての指針となるであろう・・・参考書のチャート式シリーズの真似ではありません(笑)
 さて、最初に大学から配布された、講義の一覧表を見てください。科目、担当教官、概要、日時などといっしょに、必要な教科書がのっています。
 興味深いことに、全部の授業で教科書が必要なわけではないんですよね。高校では教科書なしなんてほとんどなかったと思います。
 しかも、一応本の名前は書いてあるけど、買うか買わないかは学生の自由という授業もあります。必ず用意しろというのは少ないですね。
 あなたが聞きたい講義をいくつか選んでください。そして、必要な教科書をリストアップします。必修科目のものも。
 なぜかって?
 これから自分で買いに行くからですよ、教科書を!
 小中高と、教科書を自分で買った経験なんてあまりないですよね。でも東大では、自分の教科書は自分で買うのです。
 これからあなたが東大生としてやっていく上で「自己責任」という言葉の重みが、入学前とは比べ物にならないくらい、増してきます。
 誰も、勉強しなさいなんて言ってくれません。遅刻をしても叱ってくれません。履修科目届を提出しなさいとも言われません。
 「なんて自由なんだ、すばらしい!」(笑)
 ところで履修科目届とは?それを大学に提出しないと、授業をうけることすらできなくなるという重大な書類です。必修科目でさえも受けられません。
 するとどうなるかというと、成績がまったくつけられなくなります。さらにどうなるかというと、もういっかい1年生をやりなおしってことになります。つまり留年
 ええ、こんな大事なことでさえも、やれと言ってくれる人はいません。提出締め切りをすぎて気がつき、涙する学生が毎年出てきてしまいます。
 大学側からは、「掲示板を見てください」としか言いません。必要なことは全部かいてあるから、勝手に見てね、あとは知りません。ということです。
 掲示板というと、もしかしたらインターネットを思い浮かべるかもしれませんが、この場合は実際に手で触れる、実物の紙ががびょうで貼ってある板のことです。
 駒場キャンパス正門を入ってすぐ左手に、これがあります。最初は黒山の人だかりになるかもしれませんね。あとは、進学先発表のときとか。
 それ以外に掲示板を見る目的といえば、「講義がお休みになっているかどうか」ですね。休講のお知らせ。これは最重要情報です!
 休講が多い教官は人気が出ます。休みと知ると、学生は小躍りしながら遊びにいきます。仕事を休んで喜ばれるなんて、変わった職業ですね、大学の先生というのは(笑)
 えっと、そうそう、これから教科書を買いに行くんでした。
 駒場キャンパスの中心部から外れた高台になっているところに、ドーンとでっかいプレハブ小屋があります。大きいのに小屋とはこれいかに?
 この特設建造物の壁には、「教科書販売所」という張り紙が。お目当ての教科書を探す新入生でおお賑わいです。
 一人当たりの購入額は、1万円くらいは軽く突破してしまうのではないでしょうか。それが3000人もいたら・・・お店ぼろもうけ(笑)
 賢い倹約家なら、ここで組合員証を提示します。生協、東京大学生活協同組合の。これを持っていると、なんと1割引で本が買えるのです!
 入学時に手渡された書類の山の中に、加入の手続きができる紙がきっと入っていたでしょう。在学中ずっと役に立つので、ぜひ入っておきたいですね。
 欲しい教科書を見つけ、何冊も教科書を抱えてレジに並ぶ人の列。重そうな袋を抱えて帰途につく人・・・
 この膨大な数の教科書たちのなかで、いったい何冊が本当に読まれ、何冊が本棚の肥やしとなるのでしょうか。
 こうして大金をはたいて購入した大切な本なのですが、時がたつにつれやる気を失った学生たちは、粗末に扱うようになります。読みもしません。
 そしてそんな先輩から、教科書をタダで譲り受けるという、要領のいい東大生もちらほら出現。さすがです(汗)
 でも、そんな上下のつながりがなかったらどうする?次なる手は、古本屋さんです。駒場東大前駅のすぐ近くにもあるんです、一件。
 けっこうきれいなのがあったりします。もしかしてぜんぜん使わなかった?(笑)たとえ古くても、その授業が終わるまでしか使わないと思えば、気になりません。
 オークションでもたまに出品されていることがあります。いろんなツールをうまくつかって、できるだけ出費を抑えておきましょう。
 これからのキャンパスライフ、なにかとお金が必要になることがあります。一人暮らしなんかしてたら、なおさらです。
 そして、せっかく縁あってあなたの所有物となった本です。ぜひそれを使い込んで、学問の道にはげんで欲しいと思います。
 本を人に売ることで得られる対価よりも、その本から得られた形のないもののほうが、あなたの頭に残り、あなたの心をうるおしてくれるのですから。





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