将来の夢

いま全国で放送されているかどうかわかりませんが、テレビコマーシャルで、ぼくがすごく好きなものがあります。
デジタルカメラのCMで、ジャニーズ事務所のアイドル「タッキー」こと滝沢秀明さんが出演しているものです。
共演者として、小さな子供が出てきます。デジカメのファインダーで子供を見ると、その子の将来の姿が映し出されるのです。
その姿とは、あこがれの職業についた自分。いま持っている小さな夢を、かなえてしまった自分なのです。
夢は、願えば叶うんだ・・・
というナレーションとともに、企業名が出て終わる。
あなたもこのCM、見たことがあるのではないでしょうか。
え、イケメンのかっこいい顔しか印象に残ってないですって?(笑)
ではこんど見る機会があったら、ぜひストーリーのほうにも注目してみてください。プチ感動的です。
そうです、夢はかなうんです!つよく願えば!
あなたの将来つきたい職業はなんですか?
実質的に日本を動かしている高級官僚?悪をくじき正義を助ける敏腕弁護士?自然の神秘を探求し続ける科学者?巨万の富を得て優雅に暮らす大社長?その分野ならば右に出るものはいない専門技術者?人間の深層心理を精緻に描写する文豪?地球よりも重い人命を救助する名医?
ちなみにぼくが幼稚園生のときになりたかった職業は、「ごみ屋さん」です。
「なにそれ?」
そのころうちの前がちょうどごみ収集所になっていて、週に3回くらい、トラックがやってきました。
人が降りてきて、すでに山積みにされたごみ袋をどんどん荷台にほうり投げているのです。
『お、おもしろそう・・・』
これがぼくの感想でした。そんなぼくのあこがれのまなざしをあとに、トラックはごみを乗せて走っていきました。
卒園式の日、保護者を招いて園児たちの発表会がありました。将来なりたいものを、絵とともに発表するのです。
みんなのなりたいものは、お花やさん、ケーキやさん、おもちゃやさん、飛行機のパイロット、サッカー選手、野球選手・・・
そこに、ぼくだけ「ごみやさん」
しかも、ごみを乗せたトラックの絵をもって、目をかがやかせて発表しているではありませんか!
大人たちは笑っていました。でも、ぼくは「なんでわらっているのかな?」と不思議に思っていました。
あれは、ごみを売っているわけではないんですよね。百歩ゆずってごみを売っていたとしても、なぜすき好んでごみを選ぶのか。
うちの親はそうとう恥ずかしかったことと思います(笑)
・・・さて、あなたの夢の職業、考えてくれましたか?
ぼくのおかしな話を聞いている場合ではありません。(勝手に話したくせにね)
なにになりたいのか、ちょっと考えてみてください。
もう決まっていれば、それもいいですね。
でも、結論がでなくてもいいんですよ。まだ、なにになりたいかわからない。そういう答えもあって当然です。
いまあなたの頭の中に選択肢としてあがっている職業は、あなたが知っている職業だけのはずです。
「え、そんなのあたりまえじゃんか。」
いえ、それが重要ポイントなのです、見落としがちな。
知っていることしか考えられません。そして、よく見しっていることほど、よく考えます。
5、6才児のぼくも、いつも家の前にくるトラックを見ていたからこそ、それに興味を持ったのです。
逆に、今まで見たことも触れたこともないようなものは、頭の中では「存在しないもの」と同等です。
・・・ということは?
そう、無知であることは、可能性をせばめることなのです!
たとえばマスコミに興味を持ち、テレビアナウンサーになりたいと思ったけど、競争率が高いからあきらめたとします。
でも、テレビ一つをとっても、見えないところでいろんな人がいろんな役割をしています。
番組を企画して制作する人もいます。機材の調整や配備をする人もいます。広告会社との連携も密接です。
こうして視野を広げることで、マスコミ関係の仕事につきたいという夢をあきらめる必要がなくなります。
あなたがいま、あまり多くの職種を知らないのを悲観することはありません。
膨大な数の職業のなかから、あなたがつこうと思えばつける職業の数を、できるだけ多くする、それが中学生・高校生くらいまでの時期です。
その間は、広く浅く、いろんな基礎的な勉強をしますよね。5教科だけでなく、家庭科、音楽、美術、体育などなど。
あなたが近い将来、「この仕事やってみたい!」と思ったとき、それに必要な土台を身につけているようにするためなのです。
どんな仕事を、あなたがやってみたいと思うかなんて、その時になってみなければわかりません。あなた自身でさえも、そうです。
だから、いまのうちは、できるだけはば広く、できるだけ多種多様な知識と体験を積み重ねているのです。
おそらく、いま学んでいること全部をそのままそっくり使うということは、ありません。
いや、それどころか、「こんなのなぜ勉強したんだろう?ぜんぜん使わないし、ムダだったなぁ・・・」と思うくらいです。
古典文法や三角関数を普段の生活で使っている人、みたことないですよね?(笑)
でも、そんなマニアックに思えるものを、日々の仕事をする上で、普通に使っている人たちもいるのです。
一生、ゼッタイに、そんな職業にはつかないし、そういう人とも一切関わりをもたない!という確証があるならば、いいでしょう。
しかし、万が一、あなたがつきたくなった職業に、そういった知識が要求されるとしたら?そんな人たちと関わる必要が生じたら?
そのときまた、一から勉強をし直しますか?
それは大変ですよね。そんなつらい思いをしなくて済むように、学生のうちはできるだけ多くのことを学んでいるのです。
その学んだこと全てを完ぺきに身につけるのは至難のわざですが、入り口だけでもやっているのとやっていないのとではだいぶ違います。
あとでもっと詳しく勉強したいと思ったとき、導入部分、基礎部分を知っていればとてもやりやすくなるからです。
いま、あなたは、知識を増やし、将来の可能性を増やしている最中なのです。
東大の入学試験、科目数が多いですよね。文系の人も数学があるし、理系の人も国語があります。
それに比べて、私立大学などはどうでしょう。少ないですよね。センター試験の利用科目数も少ないですし。
それは、ある程度専門をしぼっているからです。もうその分野に進むんだと決めた人が入学すると想定しているのです。
志願者に、その分野に必要のない勉強をしてもらうよりも、直接関係することだけを学んで欲しいと思っているからです。
科目数を減らせば学生が集まるだろうという打算的な考えは論外です。経営状況が厳しいと仕方ないのかもしれませんが。
進路が決まる。それはいいことです。が、それはつまり、ほかの道へ進む可能性を閉ざすということと表裏一体の関係なのです。
あなたは、いまのあなたの蓄えている知識、経験だけで将来を決めたいと思いますか?
まだまだ世の中には、あなたの知らないことがいっぱいあります。
できることなら、少しでも多くの情報を仕入れてから、それからゆっくりじっくりと考えてみたいと、思いませんか?
ぼくの場合、東大に通うために東京にでてきたことは、劇的な環境変化でした。急激に視野が広がりました。
東大で学んだこと。先生の講義はもちろん、サークル、アルバイト、ボランティア、そして東京という大都市そのもの。
なかでも、同年代の、全国から集まった優秀な東大生の存在は大きかったです。彼らからはものすごい刺激を受けました。
トップレベルの人材に囲まれて、ぼくはここにいていいのかな?なんて思ってしまうほどです。
そうして駒場の2年間を過ごすなかで、自然に幅広い知識を身につけ、貴重な経験を積んでいくことになりました。
ついに決心しました。ぼくは、研究者となるために、理学部、そしてその先の大学院へと進学しようと。
もともと理科は好きでしたが、これを自分の将来の仕事にしたいとまで思ったのは、東大に入ってからのことです。
たくさんのものに触れ、今まで知らなかったことを知り、社会の大きさがちょっとだけわかり、そして決めました。
東京大学では、最初の2年間は、あなたが進路をじっくりと、かつ視野の広がった頭で考えるために用意されています。
これはほかの大学ではそうそうないことです。
この熟慮期間が、これからますます重要性を増してきます。
ここ2、30年のあいだに、人類の得た知識は爆発的に増加しました。新たな学問分野も多種多様なものが生まれています。
それにともなって、必然的に学習すべきものの量・種類も膨大なものになってきています。
昔の大学は今の大学院に相当する、とよく言われます。
それくらい、現代においては学ぶことが大量になっているのです。それと歩調を合わせて、社会も複雑化しています。
情報があふれています。あなたが進路をきめる際の判断材料は、かつてとは比べ物にならないくらい多いです。
そんななか、いますぐ将来への道を一つに決めるとして、最良の選択ができる自信はありますか・・・?
多感な時期の2年間、生きた知識を吸収し、将来に真正面から向き合える猶予が与えられる。
そこは東京大学です。
東大は人材が優秀で、資金が豊富で、名声があるだけではありません。この教育システムも一つの、そしてすばらしい魅力なのです。
日本経済新聞の記事によると、就職してから3年以内に退職する新入社員の割合は3割をこえるそうです。
それくらい、自分のやりたかったことと、実際やっていることのギャップが大きいということです。
判断をあやまったのです。もっと実状をよく知ってから、将来を決めるべきだったのです。
あなたが80年生きるとして、20歳から60歳までの40年間、つまり人生の半分は、仕事をしています。
あまり興味のない、たいして面白くもない、どちらかというといやなことをしながら、半生を漫然と過ごしますか?
それとも、本当に自分に合った、趣味も適性も適合したやりがいのあることをしながら充実した生を送りたいですか?

それをきめるのは、あなたです。未来のあなたでも過去のあなたでもありません。いま現在のあなたです。
決断は慎重にしてください。あせることはありません。ただし、いったん決断したら、それにむかってまっしぐらに進むこと。
これが成功への最短経路です。
金にもまさり、矢の如く過ぎるあなたの貴重な「いま」を、まるで小動物をいたわるように、だいじにだいじにしてあげてください。
それはやがておだやかな光を放ち、輝かしいあなたの未来として表れてくることになるのですから。





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