隠れベストセラー

最近の書籍でベストセラーになったものと言えば、何を思い浮かべますか?
女子高生作家綿矢りささんの「蹴りたい背中」、東大医学部を出た養老孟司先生の「バカの壁」などが話題になりましたね。
販売されているわけではないかもしれませんが、世界中で数え切れないほど読まれている「聖書」は隠れたベストセラーです。
東大生協の書籍部で大きな売り上げを上げたものといえば、マンガの「東京大学物語」や「萌える英単語モエタン」などがあります。
東大だからといって、難解な専門書ばかり売れているわけではないのですね。マンガもありますし、雑誌もあります。
そして実は東大にも、お店では売られていない、隠れた裏ベストセラーがあるのです。その名は、
「東大生協一言コメント集」
・・・なにそれー?ですって?東大生以外の人はまったくと言っていいほど知らないと思います。
これは、東大生協のお店(文具、食品売り場や学生食堂など)に寄せられる、利用者からの意見を集めて冊子にしたものです。そのコメントには、お店側の人のお返事もついています。
例えば、チョコレートのなんとかっていうお菓子が売ってなかったので仕入れておいて下さいとか、今日のチキンカツなんとかっていうメニューがとてもおいしかったですとかいうものです。
お返事は、わかりましたとか、ありがとうございますとか、簡単なものです。
それのどこがおもしろいのか、ですって?
いやいや、そういった上品なコメントばっかりだったら面白くない・・・じゃなくてとても平和なのです。
しかし、中には失礼なもの、意味不明なもの、コントのようなやりとりのものなど、人間のひきこもごもを垣間見ることができます。
人気インターネット掲示板の「2ちゃんねる」に似ていますね。匿名だから言いたいことがいいやすいのです。
このコメントというのは、一言カードという小さな紙切れに書いて、鍵のかかった郵便受けに入れるというやり方でお店に届きます。
自分の名前は書いても書かなくても構わないので、匿名OKです。たまにヘンな名前の人もいます(笑)
ということで、もう言いたい放題好き勝手にいろいろ書いてあるんですね。
新しく書かれたコメントは、お店の掲示板にがびょうで貼られています。そこがいっぱいになってきたら外されて、のちのち冊子の形にまとめられるのです。
一月ごとに冊子になって発行されています。
ぼくはその、がびょうで貼られている段階のものを見ていたとき、面白いやりとりを発見しました。なかなかの傑作です
利用者:「トレイが壊れているので直してください。」
生協:「確認しましたがどこも壊れていませんでした。」
これは、生協食堂での話です。トレイと言っているのは、利用者が自分で持って、その上にごはんとおかずを乗せて運ぶために、食堂におかれているものです。
当然セルフサービスで、食事をもらったら、空いているテーブルまで運んでいき、食べ終えたら下膳口まで戻しに行きます。
ぼくも思っていたんですよね、このトレイがちょっとぼろすぎないか、って。たまにひびが入っているものもあるんです。
重い食事を乗せたトレイのはじっこを片手で持って運んでいたら、「ミシミシッ」と音がして、トレイが曲がってきたことがあります。
慌てて両手で支えました(笑)
それでも、食事を運べればいいのですから、特に不便も感じていませんでした。でも、それを改善してほしいと思っていた人がいたのですね。
だからさっきのコメントを書いたのに、壊れていないという回答だったものですから、また同じ人らしきコメントが掲載されていました。
利用者:「ひびが入ってるじゃないですか、よく見てください。」
生協:「もう一度確認しましたが、やはりひびは入っていませんでした。」
枚数がかなりあるので、確認した中にはたまたま壊れているものがなかっただけなのでしょうか。
それとも、そんなにトレイを直したくないのでしょうか。予算が足りなくて大変なのでしょうが、事実と異なる発言はいかがなものかと思います。
財政が厳しいなら、正直にそれを話してくれれば、こちらとしても納得がいくのに。
そうしてなんとなくどんよりとした、すっきりしない気持ちのまますごしていたある日、唐突に生協側からのコメントが出ました。
生協:「トレイとトイレを間違えていました!」
一同:「えーっ!!」
なんと、トレイが壊れていると言われて、トイレを見に行ったのだそうです(笑)たしかに食堂にはトイレが設置されていますけど、ねぇ。
なんでも、食堂で働く人たちの間では、「トレイ」ではなくて「おぼん」という名称で統一しているので、間違えてしまったのだとか。
まるでお笑い芸人「アンジャッシュ」さんの漫才のように、勘違いをしたままどんどん話が進んでいってしまったのです。
思い込みっていうのはこわいですね。月極駐車場を「げっきょく」さん専用の駐車場だと思ってたっていう話はよく聞きます。
受験勉強でも、もし間違えて覚えてしまったら、なにがなんでも訂正してくださいね。結構大変ですよ。
でも、そうやってがんばって直すことができたら、それはかえって強い記憶として頭に残ることでしょう。
なにはともあれ、双方の誤解がとけて一件落着です。
それからしばらくして、全てのトレイ、いやおぼんが一新されました。今までの薄汚い(失礼!)ものとはまるで違う、ピカピカの新品です。
これで食事もおいしくなりました。東京大学生活協同組合は、利用者のことを考えてくれていたのですね。
おもしろい話はほかにもいっぱいあります。全部この隠れたベストセラーの中に収録されています。
あなたも来年東大に合格したらパラパラッとめくってみると面白いですよ!





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